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守るべきもの

2010/12/11

とりあえずこれといってネタがないので、むかし携帯サイトで書いてた小説にちょっと手を加えて載せとこうかなww
MHの世界観をぶっ壊しかねない、モンスター目線の小説ですが^^;




~守るべきもの~

新緑の暖かな匂いが、風に乗って薫ってくる。
ドスファンゴはその薫りをいっぱいに吸い込み、小さく鼻を鳴らした。
またこの地にも、恵みの季節がやってくる。
豊かな緑とおだやかな日の光が降り注ぐ、繁殖期の訪れだ。
それとともに、今の彼には守るべきものができていた。
先日産まれたばかりの、4匹の小さな子供たちだ。
4匹のうち3匹は、昨日までに歩けるようになっていた。
しかし最後の1匹は、まだ立ち上がることができない。
弱肉強食の世界では、自らの足で立ち上がることができないということは死を意味する。
他の肉食獣や、凶悪なハンターたちの餌食になるのを待つしかないのだ。
「あの子が立てるようになるまで、特に縄張りの見張りを強化せねば…やっとワシにも、守るものができたのだからな…」
ドスファンゴは独り言をつぶやくと、少し照れた笑いを浮かべた。
いつも危険の中に身をおいていた彼は、家族を作ろうなどと考えたこともなかった。
しかし初老にさしかかろうとしている今、守るべきものがある喜びを実感している。
何事もなく今日という1日が終わればいい…
今まで考えたこともなかったが、それが世の言うところの『幸せ』だということに、彼はいまさらながらに気がついたのだ。
しかし…
彼のそのささやかな願いは、新緑の風に混じる人間の声によって打ち砕かれた。
「よりにもよってハンターどもとはな…」
彼は他の肉食獣など比べ物にならないほど、人間のハンターたちが恐ろしく危険だということを知っていた。
狡猾で残忍で…どれだけの仲間たちが奴らの手にかかっただろう…
しかし今の彼には、命を賭しても守らなければならないものがある。
「くるならこい、ハンターどもよ!今のワシは決して引かんぞ!」
彼は鼻息も荒くそう叫ぶと、前足の蹄を掻き鳴らした―――。

「剣士は敵を囲めっ!ガンナーは高台から支援を!」
一人の年配のハンターが、他の若いハンターたちに指示を出す。
それまでまとまりなく右往左往していた若いハンターたちは、その声に弾かれたかのように動きだした。
「ちぃっ!」
ドスファンゴは軽く舌打ちすると、すばやく方向を変えて年配のハンターに突進した。
彼がもっとも危険だと、直感で感じとったからだ。
「あまいっ!」
しかし年配のハンターはヒラリと身をかわすと、強烈なハンマーの一撃を見舞う。
「ぐあっ」
ドスファンゴは思わず苦痛の呻きをあげた。
このハンターは、ワシが今まで相手をしてきたどのハンターより腕が立つ…彼は首筋の毛が逆立つのを感じていた。
勝てないかもしれない…そんな考えが頭をよぎる。
「しかしワシは…負けるわけには…!」
折れそうになる心を奮い立たせ、4本の足に力をこめた。
しかし先ほど痛めた前足の蹄が、耐えがたい痛みを彼に与える。
「がぁぁぁぁ!」
ドスファンゴは気合の声を上げると、その巨大な牙をがむしゃらに振るった。
大剣を構えて斬りかかってきていた若いハンターが、まるで石ころのように弾き飛ばされてゆく。
だが…それが彼の限界だった。
もう立ち上がることさえままならない。
「ここまでか…」
ドスファンゴは覚悟を決め目を閉じた。
閉じた瞳の奥に、彼の愛する子供たちの姿が浮かんでくる。
「ぴー、ぴっー!」
そのとき、愛しき子供たちの甲高い鳴き声が聞こえた気がして、彼はゆっくりと目を開いた。
そこには、彼の愛する子供たちの姿…
4匹がハンターの前に立ちふさがり、必死にドスファンゴを守ろうとしている。
震えながら立っている1匹は、あの立ち上がることのできなかった最後の1匹だ。
「い、いかん!逃げろ、お前たち!」
ドスファンゴは必死に叫んだ。
なんとかしようともがくが、身体が言うことをきかない…。
「なんだこのちっこいのは!どきやがれ!」
若いハンターが剣を振り上げる。
「やめてくれぇぇぇぇ!」
「やめろっ!」
ドスファンゴの悲痛な叫びと、年配ハンターの鋭い声が唱和した。
その声にビクリとした若いハンターが、慌てて剣を下ろす。
「今日の訓練は終了だ。帰るぞ…」
年配ハンターはそう告げると、ドスファンゴに背を向け歩きだした。
「し、しかし教官!まだ敵が…!」
先ほど弾き飛ばされた若いハンターが、納得がいかないと言いたげにそう叫んだ。
彼は恨めしそうな目でドスファンゴを睨んでいる。
「聞こえなかったのか?オレは帰ると言ったんだ」
静かに、しかし有無を言わせぬ強い声で、教官と呼ばれた年配ハンターは若者に視線を送った。
その迫力に気圧されるように、若いハンターは渋々と剣を納める。

赤く染まり始めた西の空に、人間たちの乗った気球が小さくなってゆくのが見える。
子供たちが傷を舐めるのをくすぐったそうにしながら、ドスファンゴはいつまでもその夕焼けの空を眺めていた…


「教官!納得ができません!」
街にもどるなり、若いハンターは教官にくってかかった。
他の二人も、それに同意するかのように頷いている。
しかし教官は軽く手を上げてそれを制すると、街の中から走ってくる小さな人影を指差した。
それは、小さなかわいい女の子。
「パパー!」
女の子は満面の笑みでそう叫ぶと、走ってきた勢いのまま教官に抱きついた。
「今日は娘の誕生日なんだ。こんな日くらい、血に染まっていない手でこいつを抱きしめてやりたかった。お前らには悪いことをしたな」
そう言って振り向いた教官の瞳は、ドスファンゴと同じ優しい父親のそれだった―――。
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